大気と海のフロンティア

気象学の研究を行っている大学院生が様々な「フロンティア」に進むためのブログ

気象講演会 in 三重大

6/8〜9に元気象庁長官 二宮洸三さん,気象キャスター 高田斉さん,三重大教授 立花義裕先生による気象講演会が三重大で行われました.

 
 
6/8(土)
工学部の「さきもり塾」という自治体・教育関係者向けの防災講座での講演でした.
 
・二宮さん
災害とは「地震,津波,台風などにより引き起こされる不時の災い・被害」のことである.災害の原因は,自然災害人為的災害があり実際の災害はこの2つが含まれる.
災害対策には,予防的対策である「防災」と被災時における被害軽減策である「減災」がある.両者は共に大切な対策だが,異なる概念である.
対策には「想定」が必要である.対象期間と地域を決め,この期間・地域に発生する確率の推定を行い,採るべき対策費用 vs 採らない場合の損害と予算を勘定し,対策を行うかを決定する.この「対応想定」が決定されれば,自動的に「想定外」も決められたはずであるが,国民には「想定外」について十分な周知がなされていない
「対応想定」範囲内の対策,行動,訓練,資料(ハザードマップ等)は「対応想定」内だけで機能し,有効である.
したがって,真の大災害は「対応想定外」で発生する.この事態ではマニュアルのみに頼らない臨機応変な対応が求められる.

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防災・災害対応の本質がわかる本

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・高田さん
避難情報は避難所まで行く方が危険であれば自宅に留まるなど,型にはまらない使い方をする.
気象庁が出す気象警報について,マスコミは「分かりやすい表現+短い言葉」で実際に行動してもらえるよう工夫した伝え方に変えた.例えば,「これまで経験したことのない大雨」,「平成○○年豪雨に相当」など(大きな災害には気象庁が名前を付ける.後世に伝える,比較基準とするため).
日頃から災害への備えをしておく
→最新の気象・防災情報を入手できる体制づくり
危険を感じたら避難勧告がなくても速やかに避難する.

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・立花先生
災害を減らすためには地球科学を理解する人を増やす必要がある.しかし,高校で地学を学ぶ機会はほとんどないのが現状である.
地方自治体で地球科学を学んだ人を活用しているか?

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・総合討論
防災対策と減災対策でそれぞれどこまで被害軽減できるか,市民に公開する必要があるのではないか?
日本では防災と減災を合わせて「防災」と呼ぶことが多く,両者の区別があいまいである.
マスメディア:防災情報だけでなく減災情報を発信する必要がある.しかし,防災に比べインパクトが弱い.
減災情報を統括する部署はある?どこが何を担当するか,責任を明確にする.
→行政で話し合っているか?
 
学校教育で,防災・減災の区別をしっかり行う.
今のカリキュラムでは組み込めないのではないか?
授業内容に上手く組み込む
例:速さの計算で津波を題材にする.
社会科の中に組み込むのが良い.
例:尾鷲は日本一雨が多いのを地理の降水量分布で教える.
体育
例:高台へ走って逃げる練習をする.
 
説明会を行っているが,正しい見方が伝わらない.
・欠点
隣接地域が書かれていない.他市の防災担当者との連携が必要である.
危険でない地域も安全ではないことを明記されていない
・良い例
富士山ハザードマップ:複数自治体が連携して作成した.
 
マスメディア
・専門用語は使わない:日常用語で表現する.
→受け手が理解しなければ意味がない.
・安心につながる情報:現状・今後の予想を伝える.
・避難するべきか,その場にとどまるべきか,判断する材料の提供
 
「大気の状態が不安定」
→具体的にどのような現象が起こるか説明する必要がある.
「雷,竜巻など発生しやすい状況」と表現すれば十分ではないか?
⇒平常時の啓発として使う表現と,緊急時の表現を区別する.
 
複数の大規模災害を想定すべきか?
都市化によって,従来起こりえなかった災害が起こる可能性がある.
例:地下の開発によって大規模洪水を起こる可能性(数年前NHKで報道されたが,最近は見ない).
 
高田さん
大量の情報の中から必要なものを選択する能力を一人一人身につける.
 
二宮さん
対策を行うと,メリットとデメリットが必ずあることを認識する(51:49くらい).
万全の対策,万人が満足する対策はできないことを認識して議論を行う必要がある.
 
 
 
6/9(日)
気象講演会「キミを変える気象力」という中高校生向けの講演でした.
会場準備などで忙しくメモが取れませんでしたが,予想以上に多くの若い人が参加して,質問もたくさん出て活発な講演会になりました.

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