大気と海のフロンティア

気象学の研究を行っている大学院生が様々な「フロンティア」に進むためのブログ

科研費での学生雇用を終えて

 私は,2011年7月〜2012年3月の間,研究プロジェクト「新学術領域研究 気候系のhot spot」のメンバーの1人として月5万円で雇用されていました.詳しくはこちら
 この制度に参加して,良かったこと,改善点を書きます.


良かった点

〜採択前〜
1.研究開始前から研究計画書を作ることができる
 学生雇用に採択されるためには,まず研究計画書を作成する必要があります.研究を行ったことがない段階でこれをするのは,分からないことが多く,苦労しました.

・研究背景
 研究テーマを決めるためには,現在,何が分かっていて何が分かっていないのかを知る必要があります.私の場合は,三重大学練習船「勢水丸」に常設された超音波風速計データがあることを立花教授から聞いていました.これを使って海面乱流フラックスを直接計算できることまでは説明してもらいました.
 しかし,そもそも「乱流フラックス」の理解が不十分だったので,基礎知識を習得するところから始めて,様々な文献を調べました.まず,天気」の用語解説は初心者でも読みやすいので役立ちました.また,気象(・海洋)学会予稿集,研究集会資料,気象研究ノート,月刊「海洋」などは全てを理解できなくても一部分の理解で利用できることもあります.あとは,英語論文も全部を読む必要はないので,キーワード検索しながら,必要なところだけ読めばそれほど時間はかかりませんでした.

・研究目的
 研究背景が分かったところで,研究目的を考えました.直接観測した乱流フラックスを使って,どのような研究ができるかは事例が少ないので自分で想像を膨らませていきました.

・研究方法
 研究方法は,具体的に書くようにしました.後で,不可能だと分かったものもありますが,具体的に書くことで何をすべきかが明確になりました.

・研究の特色
 研究の特色は,この研究がいかに面白いかをアピールする箇所なので,相手に伝わるよう特に明確に書くことを意識しました.

 研究計画書を書くことで,気象学における自分の研究の立場が明確になるし,研究方針も明確にさせることができました.研究を始める前に十分に準備ができたことで,研究の最終目的を意識しながら研究をすることができました.
 研究の特色は,発表のときに強調する点なので今でも大切にしています.それを最初の段階から意識したことは,途中であれこれ解析したくなったときに,結局何を売りにして研究を進めるかを考えることができ,とても良かったと感じています.


2.研究計画の段階から意見を聞くことができる
 研究計画書の提出後,面接がありました.面接では,研究プロジェクトのメンバーの方々の前で研究計画のプレゼンを行いました.制限時間はありませんが,長すぎると聞いてもらえないので15分を目安にしました.その後,面接官の方から質問がありましたが,厳しい質問もたくさんありました.計画案の考察が甘いのがいけないのですが,面接官の方はそれを見抜いて指摘されるので,守りの受け答えがほとんどでした.でも,どこが問題点か,今後の方針はどうすればいいか,とても参考になりました.
 約1時間という長時間にわたって,外部の方を含めた複数の方から研究計画の段階で様々な意見を聞くことができたのは,その後の研究のモチベーションとなりました.


〜採択後〜
3.研究に責任が持つことができる
 学部生でしたが,自分の研究活動に対して給料がもらえました.お金をもらっている以上,しっかり研究を行わなければいけませんし,結果も出さなければいけません.特に,研究結果を他人に説明する研究発表の際に大きな効力を発揮しました.私は人前で大きな声で発表するのが苦手です.しかし,声が聞こえないとどんなに良い研究でも評価してもらえません.初めての発表の時は,自分の中で葛藤がありましたが,研究に対して雇用されている身分なので他人にしっかり伝えることにも責任を持たなければいけないと思い,大きな声で発表することを心がけました.実際は,伝えるためには声の大きさだけでなく,他の要素も必要なので,上手く伝わっているか分かりませんが,「伝えようと努力している」ことは伝わっているようです.
 自分の考えを相手に伝えるためにはどうしたらいいか,これは難しい問題ですが,研究をする以上避けて通れない問題なので,今後も考えていきたいと思います.


4.情報発信するきっかけを得ることができる
 私は,ネットは使いますが情報受信だけで,ブログやSNSなどを使って情報発信することはありませんでした.学生雇用の義務ではありませんが,面接後に面接官の方と食事中に話した内容に刺激されて,情報発信をしようと決意しました.詳しくはこちら
 ブログを書くことで,自分の考えが整理されます.また,FacebookTwitterを通して多くの方と交流することができました.実際に会うより先にFacebookで交流した例もあります.普段会う機会の少ない方とも距離が縮まり,実際に会ったときに話もしやすくなりました.1年近く使ってみて,この意味がよく分かりました.



改善点
 この制度に参加して特に不満な点はありませんでした.あえて書くなら,4と関連しますが,学生雇用に採択された人が,どのようなことを思って日々研究しているのかくらいは知りたいと思います.前年度は,採択された人が全員同じ研究室の人だったので,問題はなかったのですが,他の研究室の人だったら簡単に知ることができません.そこで,研究生活に関することなら何でも良いので,ブログで月1回以上情報発信することを望みます.Facebookなどでは短文になるので,長文を書くことができるブログが適していると思います.




 たくさん書きましたが,この学生雇用に採択されて最も良かったことは,「人前で大きな声で発表できるようになったこと」です.他の人と比べるとまだ不十分ですが,自分の壁を乗り越えるきっかけを与えてくれたことに感謝しています.
 今年度もこの制度があれば,採択されるよう努力して,さらに研究に励もうと思います.