大気と海のフロンティア

気象学の研究を行っている大学院生が様々な「フロンティア」に進むためのブログ

卒業論文

 3月1日に卒業論文が完成しました.



 書き始めたのは,2月8日で最初の締切りまで5日しかありませんでした.締切りが発表前日でしたが,卒論より発表準備に時間をかけたかったので,ギリギリまで卒論を書きませんでした.この時は,とりあえず発表要旨をもとに補足説明を入れながら書いただけでした.

 発表が終わった後,最終締切りまで2週間で修正作業を行いました.この時,気をつけたのは以下の2点です.


1. 研究背景
 多くの人が最初に読む箇所で,この研究が面白そうだと思ってもらえるか,この後を読みたいと思ってもらえるかという重要なところです.ここの流れとして,

 中緯度の大気海洋相互作用研究は最近着目されている
 ↓
 先行研究の紹介
 ↓
 先行研究は間接推定
 ↓
 直接観測による研究はほとんどない
 ↓
 観測機器が整備されていないことが原因だが,三重大学練習船「勢水丸」に観測機器がある (国内に2隻のみ)
 ↓
 このデータを用いて直接観測による乱流フラックス研究を行う

としていましたが,これだと,研究背景で最も重要な「なぜこの研究を行う必要があるのか」という問いに対する答えが「先行研究がないから」となっています.世の中には,研究されていないことが山のようにあるので,これだけの理由ではこの研究の重要性を強く主張することができません.ですので,「先行研究のような間接推定ではダメな理由」が必要です,そこで,

 中緯度の大気海洋相互作用研究は最近着目されている
 ↓
 先行研究の紹介
 ↓
 先行研究は間接推定
 ↓
 間接推定では不正確な乱流フラックスを算出する研究を紹介
 ↓
 直接観測による乱流フラックス研究が必要
 ↓
 直接観測による研究はほとんどない
 ↓
 海上での超音波風速計が常設されていないことが原因だが、三重大学の船に超音波風速計が常設されている (国内に2隻のみ)
 ↓
 この直接観測による乱流フラックス研究を行う

とすることで,直接観測による乱流フラックス研究の重要性が伝わりやすくなりました.


2. 誰に対して書くのか
 文章を書くときは読み手を意識して書くことで,どの表現が伝わりやすいかを選択することができます.卒業論文は一般的な学術論文と比べれば,不特定多数の人が見る機会は少ないと思います.そこで,具体的な読み手を意識しました.

・自分
 今後もこの研究を行うので,読んだときに参考になるようなものを目指しました.まず,研究背景では関連論文を多く引用して,大気海洋相互作用研究の中でのそれぞれの論文の立場を明確にしました.渦相関法,バルク法といった乱流フラックスの計算手順を詳細に書くことで,何をもとに計算しているかをはっきりさせました.また,超音波風速計の測定原理は?などの基礎知識を書くことで,理解が深まりました.

・後輩
 卒論は後輩が研究テーマを決めるときの参考資料になります.専門知識がなくても理解してもらえるよう,専門用語には説明を付けました.これで,この研究は面白いと思ってもらえたら非常に嬉しいです (このテーマを選んでくれたらもっと嬉しいですが).さらに,乱流フラックスとは?,バルク法とは?などの大気海洋相互作用研究全般で必要な基礎知識も書きました.

・研究者 (直接観測による乱流フラックス研究)
 直接観測による乱流フラックスの研究者の方に共通する関心事項の1つがデータの扱い方です.具体的には,ノイズの除去方法です.この方法を詳細に書くことで,初めて勢水丸の超音波風速計データを扱う方でも私と同じ結果を出すことができます.これによって,計算結果のチェックができます.
 
 卒業論文の締め切りは過ぎましたが,研究が終わったわけではありません.現在も,気づいたことなどを書き足しています.今後は,研究ノートとして活用していきたいと考えています.