大気と海のフロンティア

気象学の研究を行っている大学院生が様々な「フロンティア」に進むためのブログ

先進科学塾「見えないものを見る」

 10月23日に名古屋市科学館で開催された先進科学塾「見えないものを見る」に参加しました.

 今回は,最近話題になっている放射線を霧箱という装置を製作して見ることをしました.
 霧箱は,エタノール蒸気の過飽和状態を利用して,放射線が空気と電離して作ったイオンを凝結核とすることで,放射線が通った後を雲として見ることのできる装置です.

 材料は以下の写真の通り,簡単に入手できるものばかりです.

 作り方はそれほど難しくないのですが,LEDと導線をつなげるはんだ付けには苦労しました.思い通りの場所で固定されず,やけどしそうになりながら何度も繰り返してようやく作業が完了しました.

 過飽和状態にする液体ですが,通常は,エタノールを使用します.しかし,今回はイソプロパノールで実験しました.エタノールは高いですが,このイソプロパノールは500mlでも数百円で購入できます.

 ドライアイスでイソプロパノールを冷却して,過飽和状態にします.この状態で,しばらく待っていると,白い線がいくつも見えるようになりました.

これが,宇宙線です.地球は,大気によって宇宙線を防いでいますが,それでもある程度の量は地上まで到達していることを実感しました.遙か彼方から飛んでくるものをこんなに身近に見ることができて感激しました.

 また,この食用塩は,塩化カリウムが入っていますが,この中に含まれるあるカリウム40は放射性元素であるため,ごく微量の放射線を出しています.

実際,これを霧箱に近づけてみると,白い線が見えました.

 それから,ガスランタンの燃やす芯(マントル)には,放射性元素トリウムが多く含まれています.

この放射線は,箱に遮断されてしまうため直接中に入れたところ,今までとは異なる,太い線が見えるようになりました.今までは,β線を見ていたので細い線でしたが,トリウムはα線を出すため,太い線が見えました.

放射線は身近なものからも出ていることがよく分かりました.

 最後に,今年の原発事故後に福島で採集した土を霧箱に近づけてみました.

この土は原発から20kmほどの地点で採集したものですが,やはり放射線量が多く,白い線がたくさん見えました.

 事故から半年以上が経っていますが,これが現実なんだと強く認識させられました.一方で,放射性物質は「物質」なので,きちんと取り除けば放射線量は減らすことができます.大量に拡散した放射性物質をどう処理するのか,非常に難しい問題ですが,自分の問題として考えていきたいと思いました.